増補新版 ぼけてもいいよ
村瀨孝生(著/文 他)
四六変型判 272ページ 並製
定価 1,870円 (消費税 170円)
ISBN978-4-8167-1022-3 C0095
在庫あり
書店発売予定日 2025年11月14日 登録日 2025年09月10日
紹介
これから介護する人
介護中の人
介護が一段落した人へ
時代が変わっても老いが深まった
お年寄りの振る舞いは奇想天外、悲喜こもごも。
〝ぼけ〞への漠然とした不安が和らぎ、
見方が変わる介護エッセイ
舞台は認知症対応の通所介護施設「第2宅老所よりあい」(福岡市)。“ぼけのある世界”を生きるお年寄りと著者の村瀨孝生さんらが生み出す豊かな営みを綴った西日本新聞連載を書籍化した『ぼけてもいいよ』(西日本新聞社、2006年)。
夜中に何度も電話を掛けてきたり、数十キロも離れた家に歩いて帰ろうとするお婆さん。あるときは王様、あるときは料理評論家になりかわるお爺さん。布団の中で涙を流しながら「まだ私にもできることがあると思うの」と自問自答を繰り返すお年寄り…。
同施設で繰り広げられるエピソードは時にこっけいで、時にハードで、時にせつない。
当時、40代だった村瀨さんは老いが深まるお年寄りを敬意と愛着を持って見つめ、時間をかけて寄り添う日々を送っていた。“ぼけの世界から透けて見えてきたもの”を書き綴った連載は大きな反響を呼んだ。
前著から約20年。還暦を迎えた村瀨さんは自身の老いを顕著に感じるようになり、人生の先輩たちとの日々を振り返る。その中で「自分はどう老いていくのか」を模索する。さらに、認知症状が現れた実母の介護が始まった。介護のプロが肉親をケアする難しさを痛感している。本書はこのような心境を書いた西日本新聞連載「VIVA! 耄碌」(2024年4~6月)を増補し、書き下ろしを加え、再構成したもの。
長年にわたり、“ぼけの世界”を生きる人を温かく見つめ、老いを歓迎しない社会を俯瞰的に捉えてきた村瀨さん。誰にでも訪れる老いとその先にある別れをどう捉え、受け止めるのか。そのヒントが詰まった一冊。
目次
2P はじめに
10P 今ここ 谷川俊太郎
13P 第一章 まじめでこっけいな世界 つながることで笑いあえる
14P 高齢者は拉致被害者?
16P 「永遠の愛」を求めて
17P 疲れ果てるまで歌い続ける
19P 出会いとロマンス、永遠に
21P 長いようで短い時間
22P 話題は転々……会話は弾む
24P 1日1回の大笑い
26P その存在が周りを動かして
27P 「結びつき」を喜びに
29P 他者とつながった瞬間
31P 湯飲みをキャッチする営み
32P 接触こそが生活を豊かに
34P 委ね上手になった、あの人
36P 薬では解決できないこと
38P 子と同じ「寝ない攻撃」
39P 時にはひっつき、時には離れ
41P 逆転現象、不思議な気分
43P いかに夜の葛藤があったか
44P 戦争体験だけは消えない
46P 希望はつながることで
49P 第二章 この瞬間を大切に その人らしさに付き合う
50P みんな、なぜ「家」を目指すか
51P 何かに集中できる時間を
53P 僕はツキアイタイ!
55P 君はどこに行くのかね
56P 歩き疲れた後の心地
58P 探し回って日が暮れて
60P 一体、僕は何者?
61P 「わたくしのアレです」
63P 実は支えの「終わりない歌」
65P 「理解しがたさ」ばかり見ない
66P 解決しないことに付き合う
68P 「……ねばならぬ」の窮屈
70P 大切な〝変えないこと〟
71P 確かな「この瞬間」こそ
73P 「白い犬の家に行けない」
75P 五郎さんはしゃべる
77P 必死さに折れてくれる
78P 怒りと悲しみでつながる
80P 自分らしさはひとつひとつに
83P 第三章 そのとき、家族は 介護者だからできる寄り添い方
84P うり二つ、血は争えない
85P 家族も知らない一面
87P そうだ、来年も鎌倉に行こう
89P 息子や娘が安心すること
90P 機嫌よく笑顔で帰ること
92P 気遣いに気づかされて
94P 日々の習慣を尊重すること
95P 感動が多いのはどちら
97P 寂しさと達成感にあふれ
99P 今でも島で暮らす人
100P 「必要なこと」への共感こそ
102P 若返って生まれるゆがみ
104P 本気で怒り、喜べる尊さ
106P 関係を取り戻した瞬間
107P 元気をもらうということ
109P 「豊かに生きること」とは
111P 周りにみんなが集う日
112P 人は最期まで生きる
115P ぼけてもいいよ 老いを受容すること
116P 仲間がいることの幸せ
117P お互い気にかけること
119P お出ましか否かに一喜一憂
121P 威厳をもって仕切って
122P 僕たちにくれた「時間」
124P 全く違う時間の流れ
126P 終止符を打つのは彼女自身
127P 個人をも超えた存在
129P 「君たちはやりすぎだ」
131P 満たされたか、否か……
132P 「だまし討ち」の後ろめたさ
134P 言葉はつながるために
136P 受容と添い続けること
137P 「若々しく」の強迫観念
139P 必要な時間を保障すること
141P 「声なき声」に耳を傾け
142P 予防より、共感の世界こそ
144P なぞを解こうとして……
146P 知的な五郎さんの勘違い
147P 衰えることの自然さ認める
149P 「失う苦痛」に向き合う先に
151P 当事者たちが集う場の力
152P 排除は、排除を呼んでいく
154P 老いをそのまま認めること
155P ともに笑えることの希望
157P 泣いて笑って 効率化社会を阻止 「共感」の介護が希望を生む
161P 第五章 母と僕と、ときどき父 情実を交える介護の先へ
162P 峠のスピード狂
164P 「速く」という呪い
166P 母の混乱ステージ
168P 母と鶏肝煮
170P 寝たきりの達人
171P むくんだ右手
173P 片足のミッション
175P 休み休み生きる
177P 物に囲まれて
179P 腐りかけの旨さ
181P 緑にのまれる
182P 僕の中の暴力性
184P 母と息子の敗北
186P マリの最期
188P 生き仏
191P 第六章 VIVA! 耄碌 老いを愛でる日々
192P 「ぼけた」と言われたい
193P 憶えているふり
195P お爺ちゃんの証明
197P 「できない」の味わい
199P お迎えが来た小臼歯
200P 彼が抜けた後
202P 還暦を迎える
204P 「隠居」で広がる世界
206P 蘇った罪悪感
208P 熟練の舌使い
210P 上手く言えないこと
211P 道に迷う
213P マスターミックス
215P スマホに奪われたもの
217P アンチ「タイパ」
219P パン屋に馴染む
220P 「老廃物」とは……
222P 介護の技術革新
224P コントロール
226P 季節の中で息をする
228P 歯茎だけになっても
230P 老体の弛みと凄み
232P チャチャの尊厳
234P 他者への肯定感
236P 生きる者の営み
238P 「いま」を生きること
239P 複数の時間軸
241P 老いるという修業
243P 未来の気持ち
245P 「介護予防」の危うさ
247P 潮時
250P 「いま、ここ」を生ききる
268P おわりに
著者プロフィール
村瀨孝生(ムラセタカオ)
1964年、福岡県飯塚市出身。東北福祉大学を卒業後、特別養護老人ホームに生活指導員として勤務し、「宅老所よりあい」に転職。現在は「宅老所よりあい」「第2 宅老所よりあい」「特別養護老人ホーム よりあいの森」(福岡市)の統括所長。主な著書に『ぼけてもいいよ』(西日本新聞社)、『増補新版おばあちゃんが、ぼけた。』(新曜社)、『シンクロと自由』(医学書院)ほか。 上記内容は本書刊行時のものです。ご注文はこちらから 質問する
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