新修 福岡市史 ブックレット・シリーズ
縄文時代のタネとムシ
A5判 208ページ 並製
定価 2,200円 (消費税 200円)
ISBN978-4-87035-847-8 C6021
在庫あり
書店発売日 2026年04月30日 登録日 2026年03月19日
解説
新修福岡市史ブックレット・シリーズ第四弾。新修福岡市史ブックレット・シリーズ第四弾。土器に練り込まれたタネやムシの声に耳を傾けると、縄文時代の人々の暮らしが見えてきた!福岡で発見されたさまざまな痕跡から、人類史の壮大な流れを読み解く。
紹介
土器に眠るムシの声を聞く
土器に練り込まれたタネやムシの声に耳を傾けると、縄文時代の人々の暮らしが見えてきた!
福岡で発見されたさまざまな痕跡から、人類史の壮大な流れを読み解く。
目次
はじめに
第1章 狩猟と遊動の旧石器時代
第2章 縄文人の自己紹介
第3章 遊動から定住へ
第4章 ムシとの共同生活
第5章 縄文農耕論の今
第6章 弥生時代の開始と新たな縄文人像
おわりに
前書きなど
本書を貫くキーワードは「定住」・「栽培」・「害虫」、プラス「エコ」です。みなさんは、家に住み、毎日同じ場所から学校や職場へ通うという生活を一年中、しかも当たり前のようにやっていますが、歴史的にみるとこのような生活スタイルは今から1万年以上も前の縄文時代に始まっていました。それ以前の旧石器時代は一定の領域を周遊、もしくは往来しながら生活する「遊動」が基本的な生活スタイルでした。また、「栽培」は、タネまきや草取りなどに代表される、植物を人為的に育む行為の総体を表しますが、本書では動物飼育も含め、ヒトが自然を改変することを象徴しています。耕作地や養殖場で植物や動物を育てることは、これも現代人のみなさんにとって当たり前のことですが、そのはしりは旧石器時代にあり、縄文時代にはマメ類やエゴマなどを栽培していたことが最近の研究でわかってきました。これもヒトを土地に縛り付け、定住化を促進した要因の一つになったと思われます。最後に「害虫」です。「害虫」は狭義ではいわゆる人間生活に被害をもたらすムシを指しますが、ここでは疫病やゴミ、公害問題なども含むとお考え下さい。これらは定住や栽培がもたらした弊害であり、定住生活に必ず付きまとう負の産物です。この「害虫」もすでに縄文時代に出現していました。このような「定住」・「栽培」・「害虫」の三つの現象を世界規模で俯瞰してみると、地域ごとにその出現の時期や規模は異なりますが、長い人類史の観点からは、「完新世」と呼ばれる、地球が最終氷河期を経て温暖化する時期に始まっていることがわかります。
(中略)
生物はすべて自らの遺伝子をこの地球上に拡大するために存在します。その意味で人口が増加することは人類にとって繁栄であり喜びであります。しかし、恐竜の絶滅にみるように、発展の先には必ず劇的縮小があります。社会や経済が未来永劫右肩上がりに発展し続けることなどありえません。現在広く叫ばれるSDGsはその劇的縮小までの時間を延ばしているに過ぎないのです。太陽系規模に視点を拡大してみると、長い太陽系の歴史の中で人類は、「一瞬、地球という惑星上に存在した生物」に過ぎないということになります。ただし、私たちは単なる「遺伝子メッセンジャー」かもしれませんが、生まれた以上、生き続けなければいけません。それはみなさん自身が「宇宙の奇跡」だからです。私たちに今できることは、ヒトが絶滅種となる日が、「近い明日」ではないように、「ヒトは自然の中にある」という意識を取り戻すとともに、自然と調和した規模とスピードで活動していく必要があります。
福岡市で発見されている旧石器時代から縄文時代にかけての遺跡や遺物から、この人類史の大きなうねりと流れを感じ取ることができるでしょうか。そしてそれらは未来を見据える視点を教えてくれるでしょうか。私はそれらを、つい最近考古学の舞台に登場したニューフェイスのダイズやコクゾウムシに語らせてみたいと思います。どうぞ、最後までお付き合いください。
著者プロフィール
小畑 弘己(オバタ ヒロキ)
熊本大学名誉教授。1959年長崎県生まれ。熊本大学法文学部史学科卒業。
福岡市教育委員会、熊本大学助教授、准教授、教授を経て現職。
2005年より福岡市史編集委員会考古専門部会副部会長に就任。
著書に『昆虫考古学』(角川書店、2018年)、『縄文時代の植物利用と家屋害虫-圧痕法のイノベーション』(吉川弘文館、2019年)など。
2025年、第84回西日本文化賞を受賞。
福岡市史編集委員会(フクオカシシヘンシュウイインカイ)
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