羊と烏 創刊号
特集 雑餉隈に恋して。
「羊と烏」編集部(編集)
四六判 112ページ 並製
定価 1,760円 (消費税 160円)
ISBN978-4-907902-44-5 C0425
在庫あり
書店発売日 2026年10月05日 登録日 2026年09月25日
解説
福岡の出版社、忘羊社と古小烏舎が共同で発行する年1回刊行のZINE。毎号ワンテーマで気になるテーマを掘り下げます。創刊号の特集は「雑餉隈(ざっしょのくま)に恋して。」。福岡屈指のディープタウンについて掘り下げます
紹介
福岡のひとり出版社、忘羊社(ぼうようしゃ)と古小烏舎(ふるこがらすしゃ)が共同で発行するZINE。年1回の刊行で、毎号ワンテーマで両者の気になるテーマを掘り下げていきます。
創刊号のテーマは「雑餉隈(ざっしょのくま)に恋して。」。福岡屈指のディープタウンの歴史と謎を掘り下げます。
目次
・雑餉隈に恋した羊と烏 藤村興晴
・「そこの角まで」 〜雑餉隈を歩く 野村 亮
・雑餉隈で本屋をひらき、居場所をつくる 藏田真吾
・ラビリンスタウン雑餉隈 村田知也
・雑餉隈の歴史地理学的考察 山村信榮
〈特 集〉雑餉隈に伝説の運河を追う
座談会 筑後川と博多を結べ!
〜近世福岡藩の大運河計画をめぐって〜
朝岡俊也/藏田真吾/齋藤明日香/
林 潤也/山村淳彦
福岡藩〝まぼろしの運河〟計画 山村淳彦
「新川」を掘る 齋藤明日香
・雑餉隈のうまい店 小川祥平
・雑餉隈周辺と戦後の駐留米軍について 山村智子
◎インタビュー 中島別荘の思い出
・銀天町の頃 1980〜1989 平原奈央子
・古さと新しさが混在する街 中山尚紀
・雑餉隈の祖父母の家 徳永圭子
・雑餉隈の日常 久木 進
・僕がオトナになった街 中牟田雅央
◎ミニコラム
・蚤の市がアツい!
・〝雑餉隈とホルモンの謎
・〝風俗街〟の起源
前書きなど
巻頭言 雑餉隈に恋した羊と烏
忘羊社 藤村興晴
きっかけはささいな夫婦の会話だった。
「雑餉隈って大野城やったよね?」
私(以下「羊」)は何の気なしに質問したのだが、妻が即座にこう切り捨てた。
「アンタ、何言いよーと? 博多区やろうもん! 雑餉隈が大野城とか言う人、アンタしかおらんよ!」
妻は福岡で生まれ育った〝地の人〟なのでそれ以上言い返すこともできず、ひとり出版社同士で事務所をシェアしている古小烏舎の野村さん(以下、「烏さん」)にこの話をしてみた。烏さんは大野城の〝地の人〟だ。
「それ、面白いエピソードですね。確かに西鉄の雑餉隈駅は博多区側ですもんね。ほら、地図を見たら駅のすぐ南に福岡市との境界線がある」
羊と烏の2人でしばし、地図を見ながら雑談。
「ほら、ここが渡辺鉄工。戦時中に戦闘機とかつくってたところ」
「そう言えば、バイクのヨシムラも発祥は雑餉隈。昔、米軍がいたころに」
「昔、風俗地帯があったけど、あれっていつからあったとかいな……」
事務所を区切る本棚を挟んで、そんなキャッチボールを続けていたある日、烏さんがネットで見つけた大正時代の古地図を示しながら、にわかに興奮しだした。
「見て! 今も残ってるこのウネウネした道、古地図にも載ってるじゃん。雑餉隈って、古道の跡が町中を走ってるんだ!」
烏さんは都市史の泰斗として知られ、『ブラタモリ』にも多く出演している陣内秀信さんの本をこれまで数冊手がけていて、福岡を都市史の視点で読み解いてみたいと熱望していた。
「なら、我々も一度歩いてみましょうか!」
そんな経緯で、2025年2月、実際に雑餉隈を歩いてみた。烏さんは興奮しっぱなしだった。
「わ、この道はこんなにウネウネしている。これは古道だ!」「この高低差がすごい!」
町歩きは予想以上に面白く、すぐにこの町についてZINEを作ってみようという話になった。
面白かったのにはもう1つ理由がある。そもそも雑餉隈に行ったのは町ブラだけの目的ではなく、実は偶然、雑餉隈・銀天町自治会の副会長をしている方から、「秋に計画している、銀天町商店街での蚤の市について助言がほしい」旨のメールが届いていたのだ。これは羊が20年前から窓口係を務めてきた本のお祭〈ブックオカ〉宛に届いたものだったが、我々も雑餉隈について調べていたところだったので、渡りに船とばかりに現地を訪れたのだった。
偶然はこれだけではなかった。私たちが雑餉隈について関心を持っているという話をすると、「実は私も雑餉隈生まれです」、「雑餉隈在住です」という人が次々と網にかかり、奇跡のような出会いが続いたのである。
今回、雑餉隈という町とその周辺に広がる、いわば「雑餉隈文化圏」とでも言えるエリアの歴史を掘り下げた。もちろん我々は歴史や地理の専門家ではないから、自由研究のような気楽さで、関係者や専門家のみなさんの力も借りながら、江戸時代に実在した伝説の運河の歴史から風俗地帯の逸話まで、硬軟織り交ぜた話題を盛り込んだ。きっかけはささいな会話だったが、いつしか福岡屈指のディープタウンと呼ばれる雑餉隈に恋をしている自分がいた。周囲からは、「いい大人が本業そっちのけで何やってんの?」と白い目で見られていたかもしれない。
著者プロフィール
「羊と烏」編集部(ヒツジ ト カラス ヘンシュウブ)
福岡市の出版社・忘羊社(ぼうようしゃ)と古小烏舎(ふるこがらすしゃ)の2社合同でつくるウェブマガジンです。 上記内容は本書刊行時のものです。ご注文はこちらから 質問する
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