文明と戦争の誕生
国家、この栄光と残酷を生み出すもの
小林 一美(著/文 他)
四六判 446ページ 上製
価格 3,960円 (消費税 360円)
ISBN978-4-86735-061-4 C0022
書店発売日 2025年10月10日 登録日 2025年09月06日
紹介
中国、ギリシア、イスラム世界、ムガール帝国、ロシア、チベット──。
知られざる歴史を明かす名著から、国家史に貫く人類史最大の難関、「文明と戦争」という絶対矛盾・二律背反の構造を独自の視点で読み解く。世界連邦共和国を統整的理念とする著者の、六十余年にわたる世界史研究の集大成。
目次
序論
Ⅰ 中華世界における文明と野蛮の誕生とその構造
戦国期の長城に関する歴史書や諸子百家の書物を読む
Ⅱ 奴隷制ギリシア社会とエーゲ海とアジア・エジプト
ヘロドトス『歴史』(岩波文庫全三冊)を読む
Ⅲ イスラーム世界の「王権・都市・遊牧民」の不思議な関係
イブン=ハルドゥーン『歴史序説』(岩波文庫全四冊)を読む
Ⅳ サマルカンド遊牧王子、ムガール帝国を建国
バーブル自伝『バーブル・ナーマ』(平凡社東洋文庫全三冊)を読む
Ⅴ ロシア革命に永久革命の夢を託したユダヤ人
中澤孝之『ロシア革命で活躍したユダヤ人たち』(角川学芸出版)を読む
Ⅵ チベット人の敬虔な精神世界とその破壊
ナクツァン・ヌロ著『ナクツァン──あるチベット人少年の真実の物語』(集広舎)を読む
参考地図
あとがき
前書きなど
人間の生・性は本来悪でもなければ善でもない。だから、善にも悪にもなれる。人間は、数千年前から、「国家・文明・野蛮な戦争」を三位一体として生み出した。この三者は「絶対矛盾の自己統一」の関係にある。近現代に入ると、高度の科学技術を使って、善も悪も爆発的に登場し発展した。戦争や紛争が続発し、多くの国に独裁者が跡を絶たない。(中略)昔、一九八〇年代、北京の中国人民大学の歴史家が、私にふと言った。「人の世は善が進めば、同時に悪も進む」と。忘れがたい。今や、「国連を基盤とする世界共和国」の誕生こそが、救いの神であろう。本書が試みるような世界史の批判的検討や、未来の人類世界へ展望を経て、今、改めて「人間とは、いったい何ものなのか」と問い返す必要がある。
《本書「序論」より》
著者プロフィール
小林 一美(コバヤシ カズミ)
1937年長野県諏訪郡落合村に生まれる。落合小・中学校、諏訪清陵高校、東京教育大学文学部史学科、同大学院で学ぶ。中国史専攻。佼成学園、名城大学、神奈川大学で長年「世界史」を担当。現在、神奈川大学名誉教授。主要著書『清朝末期の戦乱』(新人物往来社、1992年)、『増補・義和団戦争と明治国家』(汲古書院、2008年)、『中華世界の国家と民衆』(上下、汲古書院、2008年)、『M・ヴェーバーの中国社会論の射程』(研文出版、2012年)、『中共革命根拠地ドキュメント』(御茶の水書房、2013年)、『わが昭和史、わが歴史研究の旅』(鳥影社、2018年)、『日中両国の学徒と兵士』(集広舎、2018年)等。
近年の編著書『中国文化大革命「受難者伝」と「文革大年表」』、王友琴著『血と涙の大地の記憶』、『文革受難死者850人の記録』(共に集広舎より出版)等。 上記内容は本書刊行時のものです。

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