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細菌学者の般若心経と相即の知

吉田 眞一(著/文 他)

発売: 花乱社

四六判  296ページ 並製
価格 2,200円 (消費税 200円)
ISBN978-4-910038-82-7 C0015
在庫あり

書店発売日 2023年11月02日
登録日 2023年10月18日

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紹介

仏教の根源的な論理とは何か──
微生物学の基礎的研究で知られる著者が、若き日より探究してきた
仏教の縁起・空、矛盾的相即(そうそく)について、
身のまわりのことを例にあげ解説。“相即的生き方”のすすめ。

大学での講演録や,物の見方・考え方のヒントがつまった哲学エッセイ,
若き学究の徒へのメッセージも収録。人生の意味を問い創造し続けること。

目次

まえがき

第一章 『般若心経』と仏教哲理
 これで納得、仏教論理/『般若心経』の勉強会

第二章 相即の知
 【最終講義】善知識と相即の知との出会い/矛盾的相即の論理の探究
 「対・変化・空存」矛盾的相即をめぐる論理的諸問題

第三章 細菌学者が垣間見た哲学的世界
 アンビバレンツ/勇気をだしてパラダイム・シフト
 One health, one world/循環ということ
 楕円の論理/二つで一つ、一つで二つ/世界は広く、真理は深い

第四章 若き学究者へ伝えたいこと
 私の発見物語/私の共同研究物語/細菌学教室「青藍会報」巻頭言より
 生涯にわたって哲学をしよう/蔵書はこころを映すもの/花に寄せて めぐみ便り

第五章 ふたたび矛盾的相即
 中山延二・本多正昭の哲学

あとがき

前書きなど

【第一章「『般若心経』の勉強会」より抜粋】

 私たちはふつう二つの相反する概念を頭に浮かべるときそれぞれ矛盾したものが対(ペアー)となっていることに合点していると思います。
 たとえば磁石はN極とS極が必ず対となって磁力という作用が生じます。N極もS極も、自分だけでは磁力は生まれません。相手方があってこそ成立するのです。私が専門としている細菌学の世界でも、善玉菌と腸の健康との関係や、細菌などの病原体と我々のもつ感染症を防ぎ延命する仕組みもそうです。
 このように相反するモノ・コトが結びついて世界が論理的に成立している、その論理性のことを「矛盾的相即の論理」と呼ぶのです。
 矛盾的相即の関係にあるモノ・コトは物理化学的世界にも、生物の世界にも、生活の中にも見られることです。これがお釈迦様が悟られた縁起の法であり、矛盾的相即こそ世界成立の真理であると言えるのです。

***

【「まえがき」より抜粋】

 高校を卒業した私は九州大学医学部に進み、大学院で免疫学・細菌学の研究に没頭、昭和五十六(一九八一)年三十一歳のときに、ご縁があり産業医科大学に微生物学の講師として勤めることになりました。そこで出会ったのが教養部で哲学を教えておられた本多正昭教授です。
 産業医大には「生涯にわたって哲学する医師を養成する」という初代学長の建学の精神があり、本多先生はそれを実践しておられ、私は研究室にお邪魔してお話を伺うようになりました。あるとき本多先生が仰った「すべてが隠顕倶成です」という言葉に惹かれ、その意味をたずねたところ、中山延二博士の『華厳哲学素描』(百華苑、一九七八年)を手渡されました。「隠顕倶成」は「華厳十玄」のなかの隠と顕の矛盾的相即を表す重要な語句だったのです。それを機に中山博士の著書をむさぼるように読みました。……

 「細菌学と仏教との共通点は何ですか?」と訊かれることがあります。仏教と細菌学の組み合わせが不思議に思われるようです。私は笑いながら、「どちらも肉眼では見えません」と答えます。肉眼では見えないけれど確かに存在します。巨視的に見ても微視的に見ても、この世に起こるすべての物事・生命には、同じ論理が働いていると思わざるを得ません。
 十七歳で出会ってから今日まで研鑽を積んできた仏教哲学の真理追究の道は、もう一つの道、細菌学者として生きてきた私を支える根幹です。この一見矛盾するようにも見える二つの道は、私の中で二つで一つ、不可分なものです。付言させていただくとすれば、仏教論理は世界成立の真理であり科学的な真実であるということを、私自身の人生を通して感じていただければ、これに勝る喜びはありません。
 

著者プロフィール

吉田 眞一(ヨシダ シンイチ)
九州大学名誉教授/元産業医科大学教授

昭和24年 長崎県平戸市生まれ
昭和49年 九州大学医学部卒業
      医師免許取得
      九州大学医学部附属病院にて研修(産婦人科学)
昭和54年 九州大学医学部細菌学教室助手(昭和56年まで)
昭和56年 医学博士(九州大学)
      産業医科大学医学部微生物学教室講師(昭和57年まで)
昭和57年 産業医科大学医学部微生物学教室助教授(平成6年まで)
昭和62年 オランダ・ライデン大学感染症科に留学(昭和63年まで)
平成3年  JICAケニア感染症プロジェクトに参加
平成6年  産業医科大学医学部微生物学教室教授(平成10年まで)
平成10年 九州大学医学部細菌学教室教授(平成27年まで)
平成27年 九州大学名誉教授
      医療法人聖恵会・福岡聖恵病院に精神科担当医として勤務
      (令和5年まで)

【主著】『戸田新細菌学』改訂32~34版,共編,南山堂,2002年/『系統看護学講座 専門基礎 微生物学 疾病のなりたちと回復の促進』共著,医学書院,2005年ほか多数

上記内容は本書刊行時のものです。

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