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ウナギの“想い”を探る 共に生きる未来へ
ニホンウナギ読本

田中 克(編集) / 望岡 典隆(編集)

発売: 花乱社

A5判  136ページ 並製
価格 1,320円 (消費税 120円)
ISBN978-4-910038-97-1 C0062
在庫あり

書店発売日 2024年09月27日
登録日 2024年09月09日

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紹介

遙か2500㎞離れた外洋から,日本の河川まで大回遊する驚異のウナギの生態。
絶滅の危機に瀕するウナギは,地球生命系の未来を指し示している! 
最新の研究報告から保全活動,伝統文化まで,
ウナギと私たちの未来を本気で考えた,28名の専門家とウナギ応援団の声。

***

【執筆者】(50音順)
飯島 博(NPO法人アサザ基金代表理事)
大久保規子(大阪大学大学院法学研究科教授)
緒方 弘(鰻料理専門店「田舎庵」3代目店主)
笠井亮秀(北海道大学教授)
亀井裕介(やながわ有明海水族館名誉館長)
亀山 哲(国立環境研究所研究者)
久保正敏(国立民族学博物館名誉教授)
河端雄毅(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科准教授)
木庭慎治(福岡県立山門高校教諭)
坂本一男((一社)豊洲市場協会・おさかな普及センター資料館館長)
佐藤正典(鹿児島大学名誉教授)
田中秀樹(近畿大学特任教授)
田中 克(京都大学名誉教授)
津田 潮(津田産業株式会社社長,NPO法人大阪・ウナギの森植樹実行委員会代表)
中尾勘悟(肥前環境民俗(干潟文化)写真研究所代表)
西田 睦(琉球大学学長,東京大学名誉教授)
野中ともよ(NPO法人ガイア・イニシアティブ代表)
NOMA(モデル,アーティスト,エコロジスト)
箱山 洋(長野大学淡水生物学研究所所長/教授)
長谷川悠波(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科博士後期課程院生)
畠山重篤(NPO法人森は海の恋人理事長)
畠山 信(NPO法人森は海の恋人副理事長)
日比野友亮(北九州市立自然史・歴史博物館学芸員)
三田村啓理(京都大学大学院農学研究科教授)
望岡典隆(九州大学特任教授)
山下 洋(京都大学フィールド科学教育研究センター特任教授)
山本義彦((地独)大阪府立環境農林水産総合研究所主任研究員)
横山勝英(首都大学土木工学科教授)

目次

【総論】ニホンウナギ─限りない魅力と神秘性[九州大学農学研究院特任教授 望岡典隆]

【序章】地球の“先人”ウナギに学ぶ
人と共に生きる未来を拓く10の提案[ニホンウナギ/代理人:NOMA・野中ともよ・佐藤正典・田中 克]
●コラム1:ほとんど未知のクロコの生態 みんなで調べてみよう[編者]

【第1章】ウナギの生態・資源
汽水域の干潟がウナギを育む[鹿児島大学名誉教授 佐藤正典]
●コラム2:筑後川とウナギ[北九州市立自然史・歴史博物館学芸員 日比野友亮]
街のウナギと田舎のウナギ[京都大学名誉教授 山下 洋]
●コラム3:飼育下でのレプトセファルス,シラスウナギ,クロコの行動[近畿大学水産研究所特任教授 田中秀樹]

【第2章】ウナギを探る
ウナギのルーツは深海魚[琉球大学学長 西田 睦]
●コラム4:東アジア全体での資源管理・研究における協力[長野大学淡水生物学研究所所長/教授 箱山 洋]
バイオテレメトリーが明かすウナギの生態[京都大学農学研究科,同フィールド科学教育研究センター教授 三田村啓理]
●コラム5:外敵に食べられてもなんのその するりと逃げる裏技[長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科博士課程 長谷川悠波/長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科准教授 河端雄毅]
環境DNAでウナギの分布を解き明かす[北海道大学水産科学研究院教授 笠井亮秀]
●コラム6:環境DNAによるニホンウナギのモニタリングと自然再生 未来の干潟の再生を担う若人の皆様へ[国立環境研究所主幹研究員 亀山 哲]

【第3章】ウナギと文化 
有明海のウナギ漁[肥前環境民俗写真研究所代表 中尾勘悟]
●コラム7:有明海のウナギは語る[国立民族学博物館名誉教授 久保正敏]
ウナギ料理を極める[北九州小倉「田舎庵」3代目店主 緒方 弘]
●コラム8:江戸前のウナギ今昔[おさかな普及センター資料館館長 坂本一男]

【第4章】ウナギ資源の保全・再生の試み
高校生による森と海をつなぐ挑戦 ウナギの保全と森づくり[福岡県立伝習館高等学校自然科学部顧問・現福岡県立山門高等学校教諭木庭慎治]
●コラム9:蘇れ“鰻ガキ”「柳川掘割物語」[やながわ有明海水族館名誉館長 亀井裕介]
大阪湾のニホンウナギを森から育む ウナギの森植樹祭[NPO法人大阪・ウナギの森植樹実行委員会代表 津田 潮]
●コラム10:大阪のど真ん中にニホンウナギが生息する[おおさか環農水研生物多様性センター主任研究員 山本義彦]

【第5章】ウナギ目線の水辺環境の再生・保全
ウナギからの質問[NPO法人アサザ基金代表理事 飯島 博]
●コラム11:ウナギにも訴訟を起こす権利がある[大阪大学大学院法学研究科 教授 大久保規子]
舞根湾震災復興に果たしたウナギの役割[NPO法人森は海の恋人副理事長 畠山 信/東京都立大学都市環境科学研究科教授 横山勝英]
●コラム12:ウナギとカキと森は海の恋人[NPO法人森は海の恋人理事長 畠山重篤]
ウナギと共に拓く未来 地球に生きる大先輩ニホンウナギへの手紙[森里海を結ぶフォーラム代表 田中 克]
●コラム13:絶滅危惧種の円卓会議[森里海を結ぶフォーラム]
 
引用・参考文献一覧
おわりに
執筆者紹介

前書きなど

「はじめに」より抜粋

 今,私たちはこれまでに経験したことのない重大な危機に直面しています。それは,多くの命がつながり合う地球生命系の根本を揺るがす急激な温暖化と生物多様性の崩壊です。いずれも私たちの日々の営みとしての産業や暮らしのあり様から生み出されたものであり,今では,それらは重なり合って地球危機を増幅しています。いのちが縦横に結び合った地球生命系を下支えしてきた水の循環,海と陸(森)の間の水循環の根底が大きく崩されてきているのです。不幸にも,能登半島地震は,そのことが私たちの暮らしといのちに深く関わった持続可能な社会の大元であることを,大きな犠牲を伴って問いかけました。

 私たちが生きるこの水の惑星“地球”が直面する,超えてはならない九つの境界のうち,すでに六つまでが限界(プラネタリー・バウンダリー)を超え,後戻りできないぎりぎりのところに至っています。この危機を回避し得る道はあるのでしょうか。今一度,原点に立ち返って考えることが求められます。それは,地球上に私たちよりずっと昔から生き続けてきた“先人”としての野生の生き物の“表情”を見つめ直し,その“声”に謙虚に耳を傾け,人々が力を合わせて,身の回りの生き物と共に歩む道を探ることではないでしょうか。差し迫る地球危機を回避する道を,身近な生き物を通じて具体的に考え,行動に移すために,本書の刊行に思い至りました。

 私たち今を生きる人間の目先の都合を優先させて追い詰めてしまった“絶滅危惧種”の存在は,鏡に映し出された私たち自身の姿そのものだと思います。本書では,私たちが直面する地球の危機を身をもって最もよく知る生き物は,絶滅危惧種にしてしまったニホンウナギであると捉えました。今一度その生きざまのすごさと奥深さに目を向け,彼らの声なき声に耳を傾け,その生き方に学び直し,人間もウナギと同じ地球生命系の一員として,目先の都合による争い(分断や対立)を乗り越え,ウナギと共に生きる未来を考える入り口になればと願っています。とりわけ,これからの時代を生きる若い世代の皆さんに手に取ってもらえればとの思いの下に本書を刊行するものです。

  2024年8月                          編 者 

著者プロフィール

田中 克(タナカ マサル)
京都大学名誉教授。滋賀県大津市生まれ。小学校担任の先生が琵琶湖に釣りに連れ出してくれたことが原点となり,魚の研究に進む。稚魚に教えられた森と海の不可分のつながりから,2003年に統合学「森里海連環学」を提唱。震災の海三陸や,瀕死の海有明海などで,森と海の間,水辺の再生に取り組む。
望岡 典隆(モチオカ ノリタカ)
九州大学特任教授。1986年,東大海洋研「白鳳丸」が約3センチのウナギの葉形仔魚を採捕した航海に乗船。2009年,西マリアナ海嶺南部水域でニホンウナギの産卵親魚(水産庁開洋丸)と卵(白鳳丸)の採捕に立ち会う。ニホンウナギの復活をめざし,岩手県から鹿児島県に至る主要河川の生息環境改善に挑む。

上記内容は本書刊行時のものです。

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